14.第2回厳冬期若丹国境尾根縦走

(2007年2月20日 - 23日 )

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 京都府・福井県・滋賀県の県境に聳える三国峠から、西の方向に長く連なる京都・福井の県境尾根が若丹国境尾根と呼ばれる。


 昨年2006年は2月21日から4日間かけて、久多の奥の生杉から三国峠に登り、延々とラッセルをして八ヶ峰に達し、知井坂から八原に下山する第1回目の厳冬期若丹国境 尾根縦走を行った。
 今回は2月20日から、実働4日、予備2日合計6日の食糧を担いで、そのつづきの知 井坂から頭巾山まで縦走する計画をたてた。知井坂から堀越峠間の稜線の状態が全くわか らなかったので、福井山岳会、日本山岳会福井支部、小浜山の会に情報提供を御願いした 。無雪期の日帰り登山の実績はあるが、積雪期の縦走の記録はまったくないとの回答であった。たまたま小浜山の会から御紹介いただいた山歩仲間の方達が、無雪期ながら堀越峠 から八ヶ峰への縦走記録を持っておられて、御親切にも貴重な情報を御提供いただいた。

樹林や灌木のブッシュで視界がききにくく、且つ小さな支尾根が複雑に発達して極めて迷いやすい地形なので、昨秋の10月から12月にかけて、4度の偵察山行をおこなった 。
 今年は、例年になく雪もすくなく、稜線のラッセルはかなり楽ではなかろうかと期待 して出かけた。メンバーは、堀内潭さん(66歳)、岡部光彦さん(65歳)と私(66歳)の3人。

   

2月20日(日):晴れ

稜線の藪で赤布テープを見失いルート探索
笹原台地の幕営地

JRバスにて周山に8:35着。タクシーにて八原の登山口に9:20着(\,9580.-)。
 9:40/登山口 - 10:15/スキー場跡 - 11:10/知井坂 - 12:30/P772m - 14:55/笹原の台地 (P741mより西へ約200m)にて幕営。

 周山からの乗り継ぎバスの接続が悪いので、JR周山駅から八ヶ峰登山口の八原までタクシーで行った。今年は暖冬で雪がすくないことは覚悟していたが、美山町に入っても雪はなし。昨年2月に八ヶ峰から下山してきた時には1m以上の雪のあった八原の部落にも、全く雪はみられず。最奥民家に山行計画書を提出しにお伺いしたが、「こんな雪のない年はこれまでなかった。まったく異常です。」との御主人の弁。
稜線に出れば積雪はそこそこあるのではと予測して出発する。旧スキー場跡まで登っても、雪はなし。国境稜線に雪がなければ、炊事ができない。最悪のことを考え、スキー場跡で、谷水をカモノハシに補給し、一人当たり2.0-2.5リッターの水を担いで行くことにした。夏道はここからトラバースしている。積雪期は雪崩や滑落の危険を避けるために、昨年下山時に使ったスキー場跡の右手の尾根を登る積もりであったが、雪の無い今年は、夏道通しで歩くことにした。雪は全く出てこず、無雪期の秋の時と同じ状態。
 ラッセルが無いので、稜線の知井坂には楽につけた。しかし、稜線には全く雪はなく、北斜面の日陰にところどころ残雪がまだらに残っているのみ。縦走をつづけるかどうか思案したが、今日一晩の水は持参しているので、最悪は明日堀越峠から下山することも想定し、縦走をつづけることにした。
 知井坂からは支尾根がいくつもでてくる若丹国境稜線となり、迷いやすい箇所がいくつもあるが、昨秋につけた赤布テープのお陰で道迷いもなく、無駄な時間を使わずに歩くことが出来た。山歩仲間の方々から御推奨いただき、昨秋偵察時にも幕営した「笹原の台地」の北斜面の日陰に残雪を見つけることが出来たので、ここで幕営することにした。非常に快適なテント地である。笹原の台地が雪に埋もれていたら、もっと素晴らしかっただろうに。

  

2月21日(水):晴れ
 CS/7:10 - 8:07/P706mの少し西の肩(関電の送電線見回り道との合流点)- 9:47/
オバタケダン(P729m) - 10:35/パラボラ・アンテナ塔 - 11:30/堀越峠 - 13:50/P674m手前のコ

オバタケダンの頂上にて

ルに幕営。

 笹原の台地の幕営地より送電線見回り道との合流点までは、笹藪の中を歩く。笹はそれほど高くなく、鹿の獣道が出来ており、薮こぎはそれほどひどくない。オバタケダンへの登りは結構きつい登りだが、積雪がなくラッセルをしなくてすむので随分と楽だ。オバタケダンの頂上は、南側が開けていて、遠くまでつづく山並みの景色が素晴らしい。
 要所要所に昨秋つけた赤布テープが非常に有効で、迷いやすい場所も赤テープを確認しながら、難なく通過。ラッセルもなく、どんどん行程がはかどる。
 パラボラ・アンテナが見えて来ると、堀越峠はもうすぐだ。ラッセルがないと、こんなに楽に短時間に距離を伸ばせるものかと驚く。パラボラ・アンテナから堀越峠までは、作業用に立派な林道がついている。堀越峠の手前で、谷水を、持っているテルモス、ペットボトル、カモノハシに補給。炊事用の水がたりない時は、最悪横尾峠から谷へおりて水を補給することにして、縦走をつづけることにした。
 堀越峠より1つ目のピークまでは、標高差100m以上の急傾斜。腰までの苦しいラッセルを覚悟していたが、雪が全くなくて大助かりだ。でも傾斜自身が急なので、重荷を担いでいると、滑り落ちないように一歩づつ登るだけでも大変だ、しんどいことには変わりなし。
 当初の予定では、2日目は堀越峠までであったが、ラッセルが全くなく行程を延ばすことが出来たので、P674m手前の気持ちの良い疎林の台地に幕営した。炊事用の雪は、幸運にも杉林の木陰から採集することが出来た。

  

2月22日(木):晴れ
 6:50/CS - 7:33/P669(横尾峠看板あり)- 8:20/P783m - 9:44/頭巾山(871m) -11:00/
P835m - 13:50/上谷の林道(送電線下)にて幕営。

669m(横尾峠)のすぐ西の伐採地
旧横尾峠の石の地蔵さん
正面に頭巾山871m。
稜線に初めての残雪
頭巾山871mの頂上の祠

 幕営地からしばらくはブッシュがかなりひどい。送電線が見えてくると、直ぐに横尾峠の看板のあるピーク(P669m)。このピークの直ぐ西は、伐採された明るい切り開きとなっている。雪が積もっているときには、スキーで滑りたくなるような斜面が谷筋まで広がっている。暫く行くと、又横尾峠の看板が出てきて、小さな祠に石のお地蔵さんが祀ってある。通常の冬なら、雪に埋もれてお地蔵さんのお顔は拝めないはずだ。お地蔵さんに手を合わ、今日も元気に歩ける幸せを感謝する。
 ひとつ目のP783m近辺で、はじめて稜線に残雪が少し出てきた。頭巾山が樹林の向こうに見えだした。頭巾山(871m)へは、傾斜のきつい斜面がだらだらとつづく。お地蔵さんが現れると、直ぐ頂上だ。頭布山の頂上も積雪は全くなく、頂上の社も秋と同様の姿。
 はるか向こうにオバタケダンや八ヶ峰が望まれる。よく歩いてきたものだ。雪が深かったら、
かなり苦労しただろうに。なんとまあ不思議な、異常な暖冬だろう。 
 頂上の非難小屋の横からP835mへの尾根におりるのだが、背丈よりも高い笹藪が密生しており、昨秋の一回目の偵察時には悪天でガスで視界もきかず、P835mへの偵察が出来ずに撤退して帰った経緯がある。二度目は、上谷からP835mの東南尾根にとりつき、薮こぎをしてP835mに達し、そこから頭巾山へ登った。その際に慎重に要所要所に赤布テープ をつけて来たので、今回は何のためらいもなく、避難小屋の横から密生した笹藪の中の急傾斜をおりた。大きなザックが笹藪に引っかかり苦労する。笹の上に乗って、急傾斜の尾根で滑りそうになる。足を突っ張りながら、笹藪の急傾斜をおりたためか、調子の悪かった右膝に強烈な痛みが走った。どうも、右膝の筋肉が炎症を起こしたようだ。一段おりて傾斜が緩くなったところで、軽皮鎮痛消炎剤のバンソコウをはった。
 コルからは又傾斜のきつい薮の斜面がP835mまでつづく。幾つかのコブを越えてやっとP835mにつく。ここから左へ直角に曲がる東南尾根の急斜面をくだる。北斜面なので、ここだけには凍結した残雪が残っていた。滑りやすいので、雪の無くなるところまで、6本爪アイゼンをつけて安全にくだった。この急斜面で、私の右膝の痛みは更に激しくなった。
 薮はところどころかなりひどいが、赤布テープに導かれて迷うことなく、送電線の手前より、北に延びる傾斜のきつい支尾根をたどり、上谷へ降り立った。
 私の右膝の痛みは、これ以上歩く気がなくなるほど激しくなっており、その日は上谷ヘおりた林道の横に幕営した。

  

2月23日(金):雨
 6:50/CS - 7:15/福居。運良く7:17福居発の南丹スクール・バスがやってきて、鶴岡まで乗車。周山へ乗り継ぎもうまく行き、9:15周山発のJRバスにて京都へ帰る。

 2002年より、毎年京都・滋賀・福井の県境尾根の積雪期ラッセル山行をしてきがが、今年のように積雪のない厳冬期の樹林の県境尾根ははじめてだった。昨年までと同じように、ラッセルにあえぐしんどい縦走を覚悟していたが、持参したワカンも一度も使用する機会もなく、いささか拍子ぬけした、あっけない第2回厳冬期若丹国境尾根縦走に終わってしまった。でも、愉快な仲間との、誰一人出会わない静かな冬の薮山歩きは、実に楽しく、爽快であった。